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NOON GOOD (good afternoon)  2021 

硬質ポリ塩化ビニル管、ステンレス製パイプ、鏡、アクリル板、凧糸、空き缶、硬貨、おもり、モニター

ビデオインスタレーション
人間の考えや愛というものは物質として存在せず頭の中にあるもので境界の曖昧なものである。
ドイツの哲学者・社会学者であるゲオルク・ジンメルは著書(『ジンメルコレクション』、ちくま学芸文庫,1999)で次のように述べている。

「人間は、事物を結合する存在であり、同時にまた、つねに分離しないではいられない存在であり、かつまた分離することなしには結合することのできない存在だ。だからこそ私たちは、二つの岸という相互に無関係なたんなる存在を、精神的にいったん分離されたものとして把握したうえで、それをふたたび橋で結ぼうとする。」

人間は自然界にはない人間特有の考えを持ち、また人間間のみにある人間的価値観を生み出した。
遮断された壁の中に出入りのできる扉を作ること、
外から内を覗きこむためではなく内から外を見やるための窓を作ることは境界を暖味にすることであり、
貨幣という普遍的価値基準を作ること、水の流れる道(水道管)を形態として作ること、あらゆる美的モチーフの出発点をシンメトリーとすることは境界を作ることである。



これらの人間が作り出した概念やものを今回は鑑賞者が扉を開け閉めすることで窓の外にある硬貨の入った缶が上下するという構造を作り、
それは「わたし」と「あなた」があって出会い(繋がり)が起きるのではなく、出会いがあって「わたし」と「あなた」がそこに成り立つことの表象として制作を試みた。
また作品の柵のような位置に設置された水道管は作品との一定の距離を保つための線として存在させ、合わせ鏡は映像の中の男女と関連し、
夫婦は合わせ鏡という言葉の表現から、自分が持っている長所や短所をパートナーは映し出す可能性をもたらしていることを示している。
映像についてはヴィムヴェンダース監督作品『パリ、テキサス』1984 でのワンシーンの字幕を引用した。
このシーンは愛し合っていた2人が次第にすれ違い、孤独に価値を見出し、いつしか家族ではなくそれぞれが個としての道へ向かっていったことを回想するシーンである。
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